音大生にエール! 連載05|音大生就活ナビ

音大生にエール!

【連載05】音楽が嫌いになる?

私たちが「音楽が嫌いになる」ということは、まずあり得ないことのように思えますが、「嫌い」じゃなくて「イヤになる」ことはあるかもしれません。仕事ですし、そこには生存競争もあるからです。

音楽が嫌いになる? だから!というのではないのですが、普段から自分の生活を、溢れるような音楽に浸かっていたい等、これは若い頃に限りますね。今はなるべく音のない状態にしたい!とか・・・例えばタクシーに乗ったらラジオを消してもらったり、アマチュアの人が喜々として音楽話をして来られたりすると、もううんざりみたいな!そんなことが多いですよ。練習にしても「これをやれば絶対に良い演奏が出来る」ということがわかっているほど、新曲の譜読みが遅くなる。その長いプロセスを重く感じるんでしょうね。

いつまでも音楽が大好きで、経験も積んで色々わかるほど楽しいというのは、嘘かもしれません。もちろん音楽家は「こんな楽しい職業はない」「音楽こそ愛だ」と表では言いますが、言う人ほど怪しい(笑)。それは理解が深まれば、表面的にはエネルギーは現れず、むしろ見えない地下に大きな核を作るでしょう。それこそが「音楽が好き」「音楽への愛」いうものなんでしょうけど、それは共有して楽しむようなものではなく、自分自身への問いかけに変質します。そうなってくると、本当にやるべきことも見えてきて、音楽に関わる意義もハッキリして、漠然とした夢のような気分ではなくなってしまいます。

音楽が嫌いになる?

自然に頭の中で聴くべき音楽と聴いてはいけないものを振り分けてしまうし、心から何でも楽しめるというわけにはいかなくなる。でもこれはすばらしいこと、これこそが円熟ということです。この円熟が窮屈にならないように、大人になる前の若い時期には、より多くの音楽に接して楽しみ遊ぶことが必要だし、選り好みはせずにトライすることをおすすめしたいですね。

ピアニスト 斎藤雅広 profile

ピアニスト 斎藤雅広 東京芸大出身。ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ等に師事。18歳で第46回日本音楽コンクールに優勝し、翌年NHK交響楽団との共演でデビュー、「芸大のホロヴィッツ」と称される。 国内主要オーケストラの他に、韓国KBS響、ミュンヘンプロアルテ室内管、ワイマール歌劇場管弦楽団等と共演し、ウクライナ、イギリス、ポーランド、フランスの国際音楽祭に招かれリサイタルを開くなど、海外でも高く評価された。室内楽でも巨匠ヨゼフ・スークはじめ、ペーター・シュミードル、ヴェンツェル・フックス、ヤナーチェクSQ、ヴィア・ノヴァSQ等とも共演を重ね賞賛された他、 フランチェスコ・アライサ、ルチア・アリベルティ、デニス・グレイヴス、トム・クラウゼ、イロナ・トコディ、ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ、ヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ、サイモン・エステスをはじめ、多くの世界の名歌手達から厚い信望と絶賛を得て、わが国最高の名手という評価を不動のものとした。

斎藤雅広 facebook

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次回の掲載は2020年9月25日ごろを予定しております! ぜひお楽しみに!

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