音大生にエール! 連載22 身体が開いた状態|音大生就活ナビ

音大生にエール!

写真:ルクセンブルク・ フィルハーモニーとEU関連施設

【連載22】身体が開いた状態

つい先日のベルリン自宅での朝食です。就寝前に、切った苺に嘘って叫びたくなるほど大量の砂糖をまぶしておきましたので、朝には甘い苺シロップが大量に染み出ていました。さらに、バルサミコ酢を加えることにより、苺の美味しさをもっと重厚に味わえます。プレーン・ヨーグルトをかけ、マーブル状にかき混ぜて食べました。

苺ヨーグルト

写真:苺ヨーグルト

さて、この写真を見て、「あっ、これ大好物!食べたい!!」と、ハッと思わず息を呑んでみて 頂けますか? もっと美味しそうな実物を前にしてくださっても、構いません。このとき自分の体にどのょうな変化が起こっているか、観察しましょう。まず、口を開いていますね。目も、眉毛も、鼻も、耳も。さらに、喉、肩、肋骨、腕、手、指まで開いているでしょう。ついでに心まで全開かも!

これを、「身体が開いた状態」といいます。上半身全般が一回り大きくなったようにも感じられるでしょうか。この状態で、歌ったり楽器を演奏してみてください。息をわざわざ吸わなくても、もう既に肺にかなり入っています。肘が肋骨から離れいつもより3センチくらいふわっと上がっていたりして、楽器の構え方も少し高くなっているかもしれません。

息を使う楽器でも、弦楽器やピアノなど息を使わない楽器でも、音が楽器から直接立ち昇るのではなく、どこからともなく発生した音が部屋全体に響き渡っているような、クオリティーが何ランクも高くスケールが大きい音になります。

先生がレッスン中に隣で演奏してくれたのがあまりにも美しくて、感動のあまり身体がふわっと浮き上がりそうになったこと、ありますね?それに続いて自分が演奏したら、いつもより遥かに良い音が出て・・・。まあ、先生の演奏から直にもらったインスピレーションの為せる技なんでしょうけれども、「身体が開いた状態」と同じことが起こっているのも、大いに関係あると思うんです。

実はこれ、余分な力が抜けた状態、と同義語です。演奏中には力を抜くようにと先生から言われたので、ぐにゃぐにゃに脱力して演奏してみたものの、ろくな音が出なかった、などという経験は誰にでもあると思います。余分な力が抜けた状態=脱力状態、ではないんですね。似て非なるもの。

とある美人プリマドンナから、ご自身の体験談を頂きました。

口を開けてビックリする女性看護師

写真:口を開けてビックリする女性看護師

私のドイツ人の先生は、後ろから「ワッ!!」と大声で驚かせました。
そして、「あなたの身体は、どんなリアクションを取りますか?」と。
目も胸もパッと開きました。

なんと、こんな方法があったとは!
音の伸びやかさたるや、効果抜群です!!
ただし、驚き過ぎて楽器を落とさないように、気をつけましょう。

渡辺 克也(わたなべ かつや) オーボエ奏者 profile

オーボエ奏者 渡辺克也 埼玉県立浦和高校を経て東京藝術大学卒業。在学中に新日本フィルに入団。90年日本管打楽器コンクール・オーボエ部門で優勝し大賞も受賞。91年よりドイツに渡り、ヴッパータール響、カールスルーエ州立歌劇場管、ベルリン・ドイツ・オペラ歌劇場管の首席奏者を歴任し、現在はソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルクの首席奏者を務める。ソリストとしてもこれまでハンガリー放送響、ザグレブ・フィル、スロヴァキア・フィル、ヴッパータール響、都響、神奈川フィル、群響、名古屋フィル、日本フィル他と共演。2010年秋より2013年3月まで、産経新聞にて「渡辺克也のベルリン音楽旅行」を連載。現在「ウェブ平凡」にて「オーボエ吹きの休日 ベルリン音楽だより」好評連載中。2011年、第28回日本管打楽器コンクール・オーボエ部門の審査委員長を務める。洗足学園音楽大学客員教授を務めている。ベルリン在住。
http://www.katsuyawatanabe.com 

渡辺克也さんに聞いちゃおう!

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次回の掲載は2021年6月5日ごろを予定しております!
ぜひお楽しみに!

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