【連載50】オンラインレッスンと電子ピアノ
私はiPadを譜面台に裏向きに乗せて、
自分のピアノの鍵盤を映しながらレッスンしています。
私はiPadを譜面台に裏向きに乗せて、自分のピアノの鍵盤を映しながらレッスンしています。
今年のパリの夏は猛暑続きです。
今年のパリの夏は猛暑続きです。
電子楽器が良くないのは音質の勉強ができないから。音符を読んで弾くだけなら構いませんが、響きやタッチ、和音のバランスの勉強にはなりません。出ている音を聴かないことには手の形の説明しようがありません。楽器の響きに醍醐味があるのですから本当にピアノが好きなら、電子ピアノで満足できるはずがありません。音の綺麗なマレイ•ペライアが、今日はモーツァルトの協奏曲を電子ピアノで弾きますと言ったら、入場料100円でも誰も聴きに行かないでしょう。いや逆にペライアがそんな事を⁈と見に行ってしまうかもしれませんが。
そんな私は、今まで何度か電子ピアノで弾かされた経験があります。ウン千万円の楽器を奏でる共演者の横で、まるで対等な響きも音量も出せず、カラオケの機械のような気分になります。良い演奏でしたと言われても、何がですか?速さですか?としか答えようがありません。
以前、コルシカ島のフェスティバルで、電子ピアノを担いであちこちの村へ出掛け、毎晩野外演奏をしたことがあります。ある時、山の中の広場みたいなところで開催した際、チェリストの椅子が無いことが判明。結局椅子をチェリストにあげて、私は電子ピアノを立って弾くという、もう何屋さんですか?状態でした。
こんな事もありました。レバノンから天才ピアノ少年が来るから聴いてほしいという依頼。うちに来たら、スイッチはどこですか?と聞かれました。それだけでびっくりしてしまい、少年が何を弾いたかは覚えていません。
トルコ人のエムレ君。親の仕事の関係で滞在した3年間、一緒にお稽古をしました。
トルコ人のエムレ君。親の仕事の関係で滞在した3年間、一緒にお稽古をしました。
ひと昔前にはなかったオンラインレッスンに電子ピアノ問題。耳が腐らないか心配です。
現役音大生達は幼い頃から電子音に馴染みがあって、私とは違う聞こえ方、捉え方をしているのでしょうか。
現役音大生達は幼い頃から電子音に馴染みがあって、私とは違う聞こえ方、捉え方をしているのでしょうか。
木野 真美(きの まみ) ピアニスト profile
桐朋学園大学附属子供のための音楽教室でピアノをはじめ、桐朋学園大学卒業後、1994年よりパリ在住。中島和彦、アンヌ•ケフェレックなどに師事。高校在学中より兄であるヴァイオリニストの木野雅之の伴奏を務め、その後数々のアーティストとヨーロッパや日本で共演している。モーツァルト国際ピアノコンクール第3位、日本室内楽コンクール優勝。
子守歌集「Lullaby oh lullaby!」ベルエポックのソロ作品「雨にぬれた庭」「伊福部昭作品集」「貴志康一作品集」「アルルのカルメン」などCD,DVD録音も行なっている。
伴奏、室内楽、ソロ活動の他、現在はパリ郊外の音楽院で教師をし、レクチャーコンサートにも多数出演している。2009年にはカネボウ化粧品のサイトでコラム「パリからの手紙」を5年間連載した。
趣味はチェロとチェンバロ。現在はパリ郊外のサンジェルマン•アンレー市在住。
木野真美さんに聞いちゃおう!
ピアニストの木野真美さんにお聞きしたいことなどありましたら、こちらからお問い合わせください>>
次回の掲載は2022年8月5日ごろを予定しております!
ぜひお楽しみに!