【コラム02】 なぜ『「音大卒」は武器になる』を書いたか？
私は2015年に『「音大卒」は武器になる』を世に出しました。なぜ書いたかというと、純粋に「音大生ってすごいよ、みんな知っている？」という思いからです。真面目で礼儀正しく、正確さ・丁寧さにこだわり、コツコツと日々努力を積み重ねる……、こういう姿勢は一般大学の学生にはあまり見られません。大体がどこの大学に入るか、までが重大事で、入試が終わって入ったらこっちのもの。あとは就職までの「自由時間」と捉えがちです（理系は結構大変かもしれませんが、少なくても文科系は）。
私なんぞはその典型で、大学時代はほとんど勉強した記憶はありません（笑）。学力は受験直後の入学時がピークで、そこから4年の卒業時まで落ち続けです。しかし多くの音大生は、1年より2年、2年より3年と演奏や作曲などの音楽力を身に付け、4年の終わりがピークです。卒業演奏を聴くと、本当にすごいなぁ、と心から感心します。そんな大学生が音大には大勢いるんだと、広く世の中に知ってもらい、就活でも積極的に採用してほしいと思ったのです。
それが一番の動機だったのですが、じつはもうひとつありました。それは音大卒業生が、社会に出た後に中々うまくいかず就職課に相談に来ることが多く、それを何とかしたい、と思ったのです。
あれだけ学生時代に頑張っていたのに、なぜうまくいかないのだろう———色々観察してみると、見えてくるものがありました。音大生は「〇〇門下」という言葉があるほど先生から強い影響を受けています。先生のアドバイスが絶対で、なかなか他を見ようとしません。でももっと色々な方面から情報を入手しないと、進路を誤る人は減らないのではないかと考えました。
本を出版した結果として賛否両論、さまざまな反響がありましたが、私が一番残念に思ったのは、「音大生に安易に就職を勧める本」という的外れな書評です。なぜ的外れか、次回はそんな話から始めたいと思います。
音大生の応援団長、大内孝夫 profile
元メガバンク支店長（慶応義塾大学経済学部卒）。
音大に転職し、音大生のすばらしさに感動！『「音大卒」は武器になる』を執筆、ベストセラーに。企業就職のみならず、演奏家、音楽教室などを志すすべての音大生にエールを送る。2020年より名古屋芸術大学教授、全日本ピアノ指導者協会キャリア支援室長。他の著作として『「音大卒」の戦い方』（ヤマハミュージックメディア）、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』『「音楽教室の経営」塾』①、②巻（ともに音楽之友社）、『そうだ！音楽教室に行こう』（音楽之友社）など。
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掲載は2021年3月10日ごろを予定しております！ ぜひお楽しみに！