【コラム03】『「音大卒」は武器になる』は必ずしも就職を勧めている本ではない
「音大生に安易に就職を勧める本」という書評がなぜ的外れなのか？
大学時代に家庭教師をしていたときの生徒さんから、とても嬉しい年賀状が今年届きました。そこにその答えはあります。
「年末に先生の『武器』を再度拝読しました。多くの示唆に富んだ興味深い内容に深く感銘を受け、これは音大生にのみあてはまるものではないと思いました。」
そうなんですよ。志を持つことは大事だし、何かなりたいものがあるというのはすばらしいこと。ただ多くの場合、なれない、という現実があります。これは別に音楽に限らず、野球でもサッカーでも、この方の場合の学者でも同じです。順調に目指す階段を昇れている人はそのまま進めばいいけれど、実際には私を含めこれでは難しい、というケースが圧倒的に多いのが世の現実です。その場合にどうしたらいいか、どういう生き方があるか、そういう情報をみなさんに提供したいと思ったのです。本の冒頭でこんな願いを込めています。
「これほど努力している音大生の多くに、その努力に見合う人生を歩んでほしい。」
ですから、読んで頂ければわかりますが、決して就職を勧めているわけではなく、音大生の進路を幅広く紹介することに主眼を置いています。特に音楽で生きていきたい人には、是非夢がかなって欲しいと思い、「音楽で食べていくには？」にてその具体的方法を示し、エールを送っています。
ただ、「演奏だけでやっていくのは難しいなぁ」と感じたり、「音大生の進路には今の道以外にどんな道があるのだろう」と思ったりしたときに、一般就職に関する情報があまりに少なく、その参考になる本がほとんど、というかまったくなかった。それで「就職ノウハウ」の部分にページ数を割いたわけです。就職課にいると、学生のみなさんから「音大生は就職に不利ですか？」とか、「面接で『音大生がなぜ就職するの？』と聞かれたら、どう答えていいかわからない」という声が多かったので、そういう声を集めてまとめて本に答えを書いたわけです。
というわけで、みなさんは誤解しないでね。
音大生の応援団長、大内孝夫 profile
元メガバンク支店長（慶応義塾大学経済学部卒）。
音大に転職し、音大生のすばらしさに感動！『「音大卒」は武器になる』を執筆、ベストセラーに。企業就職のみならず、演奏家、音楽教室などを志すすべての音大生にエールを送る。2020年より名古屋芸術大学教授、全日本ピアノ指導者協会キャリア支援室長。他の著作として『「音大卒」の戦い方』（ヤマハミュージックメディア）、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』『「音楽教室の経営」塾』①、②巻（ともに音楽之友社）、『そうだ！音楽教室に行こう』（音楽之友社）など。
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掲載は2021年3月25日ごろを予定しております！ ぜひお楽しみに！