「音大卒」は武器になる②
―Yさん―
今年29歳になるYさん。学校では積極的に学生の自治会活動に取り組み、学園祭や卒業式を盛り上げてくれました。進路に迷いはありましたが、音楽に関係の深い職業に就きたいとの希望から、主として自分が専攻した楽器の部品を扱う会社に入社することにしました。
楽器店もそうですが、音楽に関係する会社の募集人数は少なく、ここも激戦でした。Yさんは見事勝ち抜き、入社を決めたのです。
ただ入社後は順調とは言い難かったようです。会社の規模が小さいため、1人でさまざまな仕事をこなさなければならず、ストレスが溜まっていきました。頼れる人もフォローしてくれる人もいない、そんな状態が長く続きました。
あるとき、「ここは私の居場所じゃない!」と感じることがありました。辞めた後、何をするにしてもおカネがかかると考えたYさん。すぐには辞めず、残業代を含めて20万いくかどうかのお給料を、ひたすら貯金していたと言います。
ある日、Yさんから連絡がありました。
「先生、私500万貯めたので、会社辞めます!」
20代で500万円!の貯金には驚きましたが、自宅通勤で毎月10万円貯金していれば1年で120万円、約4年での500万円は不可能ではありません。
とはいえ、その先の見通しがなければ、おカネはどんどんなくなります。そんな心配を口にすると、
「私の計算では2年持ちます。勉強をし直して、新たな生活基盤を築くつもりです。」
そう言い残して、連絡は途切れました。
本当にちょうど2年が経った時、Yさんから連絡がありました。
「先生、ご報告です。私、M県庁に勤務することになりました!」
貯めたおカネで公務員試験対策の学校に通い、東京都のN区とM県の公務員試験に合格し、自宅に近いM県を選んだとのことでした。
連絡はメールで頂いたのですが、嬉しくなって思わず電話し、「おめでとう!」と直接伝えました。彼女は、コロナで外出できなかった分、試験勉強に集中できたと笑いながら話してくれました。
新天地で、彼女の新たな挑戦がはじまっています。