音大生応援団長の進路指導
連載36

『音大崩壊』を書いてみて①

やや(?)刺激的なタイトルで、世の中にどう受け取られるかわからず、このコラムでも触れていませんでしたが、5月に『音大崩壊』という本を出版しました。「音大卒は武器になる」と言っていた人間が、おかしいじゃないか!―――ボクの頭の中では全く矛盾はないのですが、そんな批判の嵐が巻き起こると覚悟して書いたのですが、みんなも思っていた部分があるようで、共感していただける多くの反響がありました。そこで勇気を出して、このコラムでもこの本に触れてみたいと思います。

さて、なぜこの本を書いたかというと、大きく理由はふたつあります。ひとつは現在、文字通りの意味で「音大崩壊」が起こってもおかしくない状況にあり、それを防ぎたかったからです。音大生の大学生全体に占める割合は、2000年度2.2%でしたが、2019年には1.0%を切りました。このペースだと、2040年にはほとんど学生がいなくなる計算です。一方、『「音大卒」は武器になる』で書いたように、音楽の学びはさまざまなスキル・能力につながっており、音楽の学びは絶対必要です。ですから、「音大崩壊」を何としても防ぎたい、との強い気持ちで書いた本なのです。

音大崩壊 ただ、数字上のペースで指摘しても、多くの批判があると思っていました。ところがそこに神風が! テスラCEOのイーロン・マスク氏が出版直前に、日本の人口減少問題を「このままでは日本はいずれ存在しなくなる」とSNSで投稿したのです。音大の学生数減少は、日本の人口減少よりはるかに速いスピードで進んでいますから、早く何とかしなければなりません。そのため、改革の成功例や改革案を具体的に示す内容となっています。

日本の人口減少問題 もうひとつは、この音大崩壊現象が、日本の今の姿の相似形に見えたことです。まさにマスク氏の指摘がそうですし、日本人のすばらしさは戦後変わらないのに、日本のありようは過去30年前までと今では大違い。丁度音大が変調をきたすきっかけができた時期と重なります。 次回はこの点について書いてみたいと思います。

音大生の応援団長、大内孝夫 profile

音大生の応援団長、大内孝夫 元メガバンク支店長(慶応義塾大学経済学部卒)。
音大に転職し、音大生のすばらしさに感動!『「音大卒」は武器になる』を執筆、ベストセラーに。企業就職のみならず、演奏家、音楽教室などを志すすべての音大生にエールを送る。2020年より名古屋芸術大学教授、全日本ピアノ指導者協会キャリア支援室長。他の著作として『「音大卒」の戦い方』(ヤマハミュージックメディア)、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』『「音楽教室の経営」塾』①、②巻(ともに音楽之友社)、『そうだ!音楽教室に行こう』(音楽之友社)など。

音大生の応援団長、大内孝夫さんにお聞きしたいことなどありましたら、こちらからお問い合わせください>>>

次回の掲載は2022年8月10日ごろを予定しております! ぜひお楽しみに!

バックナンバー