『音大崩壊』を書いてみて①
やや(?)刺激的なタイトルで、世の中にどう受け取られるかわからず、このコラムでも触れていませんでしたが、5月に『音大崩壊』という本を出版しました。「音大卒は武器になる」と言っていた人間が、おかしいじゃないか!―――ボクの頭の中では全く矛盾はないのですが、そんな批判の嵐が巻き起こると覚悟して書いたのですが、みんなも思っていた部分があるようで、共感していただける多くの反響がありました。そこで勇気を出して、このコラムでもこの本に触れてみたいと思います。
さて、なぜこの本を書いたかというと、大きく理由はふたつあります。ひとつは現在、文字通りの意味で「音大崩壊」が起こってもおかしくない状況にあり、それを防ぎたかったからです。音大生の大学生全体に占める割合は、2000年度2.2%でしたが、2019年には1.0%を切りました。このペースだと、2040年にはほとんど学生がいなくなる計算です。一方、『「音大卒」は武器になる』で書いたように、音楽の学びはさまざまなスキル・能力につながっており、音楽の学びは絶対必要です。ですから、「音大崩壊」を何としても防ぎたい、との強い気持ちで書いた本なのです。
ただ、数字上のペースで指摘しても、多くの批判があると思っていました。ところがそこに神風が! テスラCEOのイーロン・マスク氏が出版直前に、日本の人口減少問題を「このままでは日本はいずれ存在しなくなる」とSNSで投稿したのです。音大の学生数減少は、日本の人口減少よりはるかに速いスピードで進んでいますから、早く何とかしなければなりません。そのため、改革の成功例や改革案を具体的に示す内容となっています。
もうひとつは、この音大崩壊現象が、日本の今の姿の相似形に見えたことです。まさにマスク氏の指摘がそうですし、日本人のすばらしさは戦後変わらないのに、日本のありようは過去30年前までと今では大違い。丁度音大が変調をきたすきっかけができた時期と重なります。
次回はこの点について書いてみたいと思います。