フリーランスで生きる途
(洗足学園音大講演より②)
音大生向けにお話しをするとほぼ必ず出てくるのが、「フリーランスとして生きるにはどうすればいいか」という質問です。
このコラム第4~11回のうち5回で「音楽家として生きる道」についてお伝えしています。ここは最低限押さえておいてほしいポイントです。キーワードは「人の心をワシ掴みにするようなSomething」「目標を持つ」「顧客にとっての価値」あたりでしょうか。
厳しい言い方かもしれませんが、演奏技術が高く、どんなに楽譜に忠実に、正確に演奏できても、多分それでは生きてはいけません。それと、単品商売は長続きしない。作曲して弾き語りができるみたいなハイブリッド性が求められるのではないでしょうか。先日お会いした音楽家は、バンドネオンの日本有数の演奏家ですが、もともとは作曲家でピアノも弾ける。でもその方は「今の時代、トークができないと音楽家として生きていくのは難しい」と言っていました。
あと、私は『「音大卒」の戦い方』という本の中で、社会を生き抜く術として必要なものとして「国語力」「常識を疑う力」「複雑系思考」をあげました。最近この中で特に思うのが「常識」です。世の中でいわれている常識を破ることができると、視界は大きく広がります。「ピッチャーとバッターの両立は、プロでは無理」という常識を破ったのは大谷翔平選手でした。常識は一度破られると、新たな常識を生みます。丁度ドラフト会議の報道がされていましたが、早くも「投手兼野手」でドラフト1位指名された選手がいました。この選手が大成するかどうかは別として、大谷選手が常識を突破したことは確かです。