人生とマラソン③
前回、「音楽以外のことにも興味を持つことで音楽の道が切り拓けたり、あるいは音楽以外に自分の居場所が見つかるかもしれない」とお伝えしましたが、最近、そのような形でご活躍されている人が目立つ気がします。
私の身近なところでは、監修した著作『音大出てどうするの?』でマンガをご担当いただいた田中マコトさん。音大声楽科で学び、劇団四季の舞台女優を目指しましたが、音大時代に舞台に立つと上がってしまう自分に気付き、イラストの道に、さらに漫画家になりました。そして最近テレビで見かけることが多くなった呂布カルマさん。なんと私の勤務する名古屋芸術大学ご出身! 名古屋芸大時代は美術専攻で漫画家志望だったそうですが、田中さんとは逆に、ラッパーとして音楽の道でご活躍されています。
みなさんにも専攻の楽器や歌以外に多くの“強み”があると思います。それをどう「武器」に変えるか―――こうした方々の人生にそのヒントが隠れているかもしれません。年末年始、改めてご自身と向き合い、スキル・能力を棚卸してみてはいかがでしょう。
さて、マラソンと人生の3つ目の違いです。それは、従来マラソンも人生も「行き」だけでしたが、人生100年時代には「折り返し」が必要になった、と言うことです。テレビマンガ「サザエさん」の父、波平さんは54歳の設定だそうです。このマンガが作られた当時は、男性なら55歳で年金生活に入って、65歳くらいで亡くなるのが一般的な人生でした。でも、今の55歳は折り返しです。私も30年勤めた銀行を辞め、次の人生を歩んでいます。「行き」だけではなく、「帰り」も意識した人生設計が必要になっています。
最後に「では共通点は?」というと、「最初が肝心」でしょうか。マラソンは先頭集団から遅れると、優勝や上位入賞はなかなか困難です。社会人生活もスタートが肝心。だからこそ大学生のうちによく調べ、考え、相談し、自分の道を切り拓いていただきたいのです。
まだまだ他にも論点があるかもしれません。いずれにせよ、マラソンは私たちに人生について深く考えさせる教材であり、さまざまな教訓が得られるスポーツといえそうです。