音大生応援団長の進路指導
連載46

人生とマラソン③

前回、「音楽以外のことにも興味を持つことで音楽の道が切り拓けたり、あるいは音楽以外に自分の居場所が見つかるかもしれない」とお伝えしましたが、最近、そのような形でご活躍されている人が目立つ気がします。

マラソン 私の身近なところでは、監修した著作『音大出てどうするの?』でマンガをご担当いただいた田中マコトさん。音大声楽科で学び、劇団四季の舞台女優を目指しましたが、音大時代に舞台に立つと上がってしまう自分に気付き、イラストの道に、さらに漫画家になりました。そして最近テレビで見かけることが多くなった呂布カルマさん。なんと私の勤務する名古屋芸術大学ご出身! 名古屋芸大時代は美術専攻で漫画家志望だったそうですが、田中さんとは逆に、ラッパーとして音楽の道でご活躍されています。

みなさんにも専攻の楽器や歌以外に多くの“強み”があると思います。それをどう「武器」に変えるか―――こうした方々の人生にそのヒントが隠れているかもしれません。年末年始、改めてご自身と向き合い、スキル・能力を棚卸してみてはいかがでしょう。

マラソン さて、マラソンと人生の3つ目の違いです。それは、従来マラソンも人生も「行き」だけでしたが、人生100年時代には「折り返し」が必要になった、と言うことです。テレビマンガ「サザエさん」の父、波平さんは54歳の設定だそうです。このマンガが作られた当時は、男性なら55歳で年金生活に入って、65歳くらいで亡くなるのが一般的な人生でした。でも、今の55歳は折り返しです。私も30年勤めた銀行を辞め、次の人生を歩んでいます。「行き」だけではなく、「帰り」も意識した人生設計が必要になっています。

最後に「では共通点は?」というと、「最初が肝心」でしょうか。マラソンは先頭集団から遅れると、優勝や上位入賞はなかなか困難です。社会人生活もスタートが肝心。だからこそ大学生のうちによく調べ、考え、相談し、自分の道を切り拓いていただきたいのです。

まだまだ他にも論点があるかもしれません。いずれにせよ、マラソンは私たちに人生について深く考えさせる教材であり、さまざまな教訓が得られるスポーツといえそうです。

音大生の応援団長、大内孝夫 profile

音大生の応援団長、大内孝夫 元メガバンク支店長(慶応義塾大学経済学部卒)。
音大に転職し、音大生のすばらしさに感動!『「音大卒」は武器になる』を執筆、ベストセラーに。企業就職のみならず、演奏家、音楽教室などを志すすべての音大生にエールを送る。2020年より名古屋芸術大学教授、全日本ピアノ指導者協会キャリア支援室長。他の著作として『「音大卒」の戦い方』(ヤマハミュージックメディア)、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』『「音楽教室の経営」塾』①、②巻(ともに音楽之友社)、『そうだ!音楽教室に行こう』(音楽之友社)など。

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次回の掲載は2023年1月10日ごろを予定しております! ぜひお楽しみに!

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