残念な音大生に遭遇
以前このコラムで「音楽家として生きる道」について書きました(5、6、9、10、11回参照)。でも、新年早々「ボクの話、音大生にはまったく伝わっていないんだ」と思う、とても残念なシーンに出会ってしまいました。
新年を迎え家でぼんやりテレビを観ていると、テレビでよく見かける女性ヴァイオリニストが音大生を指導している場面に遭遇したのです。音大生からの質問に「プロとして一番大切にしているのは、自分のために弾かないこと」「必死で練習したところは絶対間違わない、などと思ってもお客には関係ない。そんなの0.1秒なんだから」などとお答えになっていました。「そりゃそうだ」と当たり前に思いつつ、表現方法や口っぷりから、このヴァイオリニストが人気のあることに納得しながら聞いていました。
愕然としたのは、指導を受けた後の音大生の感想です。最初の学生は「一番心に残ったのは、プロとしてやっていくのに必要なのは、演奏技術だけじゃないということ」、次の学生は「例えおカネにならなくてもこの仕事(演奏)でやっていきたい」などとのたまわっているではありませんか! テレビで指導を受けるくらいですから、この大学では相当レベルの高い学生なのでしょうが、それがこんな意識でいるとは驚きです。私は「音楽+α」、「人の心をワシ掴みにするSomething」などと、手を変え品を変え演奏技術以外の大切さを伝えているつもりだっただけに、ガックリ……。次の学生に至っては、日本語の体(てい)すらなしていません。おカネにならないものは仕事じゃありませんから。当人たちはまったく気づいていない様子ですが、テレビで平気な顔で公言すれば、世間はみな「音大生って頭悪いんだ」って思うじゃないですか。意識の高い、他の多くの音大生が迷惑します。
音大生の意識をどう変えていくか、改めて課題を突き付けられた思いです。でも、このコラムを読んでいる音大生のみなさんなら、大丈夫ですよね