名古屋芸術大学の授業から①
フリーランス志望が学ぶべきもの
私は名古屋芸術大学で、「キャリアⅠ」(大学1年必修科目)、「起業論」、「インターンシップ」(いずれも選択科目)の3つの授業を担当しています。名古屋芸術大学はキャリア教育に力を入れていて、このほかにも「簿記」「民法」など実用的な科目を学ぶことができるようになっています。それぞれ他の音大ではあまり馴染のない科目だと思いますが、社会に出るうえではとても重要なものばかりです。
「社会に出るうえで」というと、一般就職する人たちの話、と思いがちですがそうではありません。一般就職する人は、社会に出るうえで必要な知識は会社に入ってから教えてもらえるので、あまり必要ないのです。私も学生時代に「起業論」や「簿記」などほとんど学ばずに就職しています。
これらの学びは、むしろフリーランスになる人にとって、とても重要です。特に音大の学生には「音楽を仕事にして生きていきたい」という学生が多くいます。各音大のホームページを見ると、大学院などへの進学と音楽系を含む一般就職が各3割、教員1割くらいですが、大学院後は多くがフリーランスになりますので、学部生の半数以上はフリーランスになると推測されます。本当はこれらの学生こそ、これらに加え「経営」や「マーケティング」などを学んでもらいたいのですが、そのような授業を用意している音大はほとんどありません。結果として、音大が多くの行き詰るフリーランス卒業生を輩出している形になっています。
なぜこれらの学びが大切かといえば、フリーランスになるというのは個人事業主という経営者になることであり、起業だからです。また自分の音楽を「どうおカネに変えて生活していくか」にはマーケティングの知識が不可欠です。こうしたことに気付くかどうかがフリーランスの命運を分けます。また音楽教室の講師も大半が業務委託。大手楽器店の講師でも個人事業主です。フリーランスを目指す学生こそ、音楽以外の学びが必要です。