名古屋芸術大学の授業から⑤ 起業
私は名古屋芸術大学で「キャリア1」「インターンシップ」の他に「起業論」も担当しています。学生と話していると、音楽や美術などの芸術と起業は関連性が低いと考えている人がとても多く、中には「フリーランスになるので起業は関係ない」と言う学生すらいます。でも、これは大きな誤解です。というのもフリーランスで音楽活動などを継続的に行うには、仕事として請け負う必要があり、それは実態として起業とほとんど変わりないからです。
ですから集客のためのマーケティング・スキル、自分の音楽をおカネに換えるイノベーション能力、自治体からの支援制度に関する知識などは、音楽教室の先生やフリーランスとして音楽で食っていきたい人には必須のものなのです。
それにもかかわらず、私が知るフリーランスになった卒業生は、「音楽は実力の世界だから、実力さえつければ生きていける」と考える傾向が強くあります。しかし、突出した実力ならばいざ知らず、多くのケースでは残念ながら30代、40代で塗炭の苦しみを味わう結果となっています。
起業に関するスキル・能力は、そのような実力の不足を補う強力なサプリメントともいえるものです。その最たるものが、自治体の支援制度。具体的には、ホームページを作る際の費用補助、音楽教室用に借りる部屋の家賃補助、ビジネスの専門家から集客のアドバイスを受ける費用補助などです。支援制度は自治体によりさまざまですが、これらをうまく活用している音楽のフリーランサーはほとんど見かけません。とてももったいないな、と思います。
じつは市町村などの自治体は、みなさんが働くのを応援しているんです。仕事がうまくいけば税金が頂けるし、逆にうまくいかず生活保護が必要になると、財政を圧迫するからです。フリーランスを目指す人は、使える制度をフル活用するとともに、個人事業主としての経営感覚を是非身に付けてください。