音大生応援団長の進路指導
連載60

時間の使い方

先日授業後に、学生からこんな質問を受けました。「私は時間の使い方が下手なんです。どうすればいいですか?」———これまでも何度か同じような質問を受けてきましたが、それらには「どうすれば上手くなるか?」との質問が言外に含まれていました。しかし今回は、改善の余地はない前提で、どうすればいいか、と聞いています。

話を聞くと、私の授業で「成果をもたらすのは強み。弱みはいくら努力しても平凡になることすら難しい」とのドラッカーの言葉から、『「今できないこと=弱み」⇒それは改善不能』との思考の流れになったようです。確かに私の授業でそこだけ切り取ると、そのような解釈も成り立つのかも、と反省。

とはいえ、何事も最初からうまくできる人なんてまずいません。大リーグで大活躍の大谷翔平選手だって、はじめはボールが5メートルも飛ばなかったでしょうし、ピアニストの角野隼斗さんだって、最初からショパンやベートーベンが弾けたわけではありません。みな初心者から中級者へと徐々にレベルをあげていき、その努力の継続から途方もない領域に達するのです。「強みになる・ならない」、「上手い・下手」は、最初から決まっているものではありません。では、どこで見極めるのかと言われれば難しいのですが…。

時間の使い方 この学生の場合は、これまで時間をうまく使う努力をしてきていないようでした。「楽器が上手くなりたいと思ったら、練習するでしょ。同じように、時間も練習次第でうまく使えるようになるよ」とアドバイスすると、わかったような、わからないような…。

そこで一歩踏み込んで、「ともかく、時間の使い方が上手くなる努力をしてみよう。毎日やること、1週間後や1か月後までにやることなどを整理して、ノートに書き出してごらん。そしてできたかどうか、一日の終わりに毎日チェックするんだ。楽器と同じで練習すれば上手になるし、努力しなければ今のままだよ。」———あとは実践あるのみ。しばらくしたらフォローしてみようと思います。

音大生の応援団長、大内孝夫 profile

音大生の応援団長、大内孝夫 元メガバンク支店長(慶応義塾大学経済学部卒)。
音大に転職し、音大生のすばらしさに感動!『「音大卒」は武器になる』を執筆、ベストセラーに。企業就職のみならず、演奏家、音楽教室などを志すすべての音大生にエールを送る。2020年より名古屋芸術大学教授、全日本ピアノ指導者協会キャリア支援室長。他の著作として『「音大卒」の戦い方』(ヤマハミュージックメディア)、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』『「音楽教室の経営」塾』①、②巻(ともに音楽之友社)、『そうだ!音楽教室に行こう』(音楽之友社)など。

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次回の掲載は2023年8月10日ごろを予定しております! ぜひお楽しみに!

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