音大に行かせても大丈夫?
7月20日(土)、私が勤務する名古屋芸術大学でオープンキャンパスが開催されました。とても暑い中でしたが、多くの生徒さん、保護者の方に足をお運びいただきました。心から御礼申し上げます。
保護者の方と接していると、やはり「音大に行かせること」への不安が強いようです。音楽領域の説明会では、保護者のみなさんに向け「このような不安を持たず、安心して音楽大学に行かせてあげてください」とお伝えしました。
理由はいくつもありますが、一番大きいのはAI新時代に入り、学びのありようが大きく変わると考えられることです。というのも、これまでの受験は英数国理社を中心に行われてきましたが、これらはAIが最も得意とする領域だからです。これは英数国理社が、私たちが日頃使っている自動車や携帯電話のように、難しい内部構造や仕組みなどを知らなくても、使いこなせればいい時代がやってくることを意味します。これからの生徒・学生のみなさんが生きていく時代は、そのような時代です。
このような時代を生きていくには、AIでは対応できない、あるいは対応できてもまだまだ人間の力に及ばない領域に自分の”強み“を持つ必要があります。それがどのような領域かといえば、端的には五感や私たちの心のありようです。「おいしいなぁ」「きれいだなぁ」という私たちの感性は、さすがのAIでもそう簡単には人間に追いつけないはずです。
またAIが出す答えのベースにあるのは過去のデータ。未来を予測するにしても、過去のデータからしか予測できません。その点音楽は、微妙な音程や音色の違いを聴き分けたり、どのように演奏すれば人の心を動かせるかが学べます。AI時代になればなるほど、この「肌感覚」が重要になるのではないでしょうか。そしてそれを養うのに最も適しているのが音楽や美術などの文化・芸術ではないかと思います。
単に音楽を学ぶというのではなく、ぜひ未来を先取りする「肌感覚」を養おうとの気概を持って音楽大学の門を叩いてください。そのような生徒のみなさんを、私たちは心からお待ちしています。