音大生応援団長の進路指導
連載84

音大に行かせても大丈夫?

7月20日(土)、私が勤務する名古屋芸術大学でオープンキャンパスが開催されました。とても暑い中でしたが、多くの生徒さん、保護者の方に足をお運びいただきました。心から御礼申し上げます。

保護者の方と接していると、やはり「音大に行かせること」への不安が強いようです。音楽領域の説明会では、保護者のみなさんに向け「このような不安を持たず、安心して音楽大学に行かせてあげてください」とお伝えしました。

AI新時代 理由はいくつもありますが、一番大きいのはAI新時代に入り、学びのありようが大きく変わると考えられることです。というのも、これまでの受験は英数国理社を中心に行われてきましたが、これらはAIが最も得意とする領域だからです。これは英数国理社が、私たちが日頃使っている自動車や携帯電話のように、難しい内部構造や仕組みなどを知らなくても、使いこなせればいい時代がやってくることを意味します。これからの生徒・学生のみなさんが生きていく時代は、そのような時代です。

このような時代を生きていくには、AIでは対応できない、あるいは対応できてもまだまだ人間の力に及ばない領域に自分の”強み“を持つ必要があります。それがどのような領域かといえば、端的には五感や私たちの心のありようです。「おいしいなぁ」「きれいだなぁ」という私たちの感性は、さすがのAIでもそう簡単には人間に追いつけないはずです。

肌感覚 またAIが出す答えのベースにあるのは過去のデータ。未来を予測するにしても、過去のデータからしか予測できません。その点音楽は、微妙な音程や音色の違いを聴き分けたり、どのように演奏すれば人の心を動かせるかが学べます。AI時代になればなるほど、この「肌感覚」が重要になるのではないでしょうか。そしてそれを養うのに最も適しているのが音楽や美術などの文化・芸術ではないかと思います。

単に音楽を学ぶというのではなく、ぜひ未来を先取りする「肌感覚」を養おうとの気概を持って音楽大学の門を叩いてください。そのような生徒のみなさんを、私たちは心からお待ちしています。

音大生の応援団長、大内孝夫 profile

音大生の応援団長、大内孝夫 元メガバンク支店長(慶応義塾大学経済学部卒)。
音大に転職し、音大生のすばらしさに感動!『「音大卒」は武器になる』を執筆、ベストセラーに。企業就職のみならず、演奏家、音楽教室などを志すすべての音大生にエールを送る。2020年より名古屋芸術大学教授、全日本ピアノ指導者協会キャリア支援室長。他の著作として『「音大卒」の戦い方』(ヤマハミュージックメディア)、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』『「音楽教室の経営」塾』①、②巻(ともに音楽之友社)、『そうだ!音楽教室に行こう』(音楽之友社)など。

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次回の掲載は2024年8月10日ごろを予定しております! ぜひお楽しみに!

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