芸術と経済学②
前回お話しした経済学の初回授業がありました。東キャンパス、西キャンパスそれぞれで行ったのですが、いずれの授業も履修者が100人近くもいてビックリ! 総合芸術大学といえど、1学年500人前後の小規模な大学です。選択科目に100名も集まるとは思いもよりませんでした。20人ぐらいの履修を想定し、ゼミ形式で考えていたのですが、急遽大部屋方式の授業に切り替えました。
初回でしたので、経済学とはそもそもどんな学問か、どういう登場人物(経済主体)がいるのか、経済活動って具体的にはどういう活動なのか、などの基本的な説明をすませたあと、当日のテーマである需要と供給の話に入りました。
中学や高校では、縦軸を価格、横軸を数量とした座標軸上に、需要サイド(必要とする側)と供給サイド(その商品やサービスを提供する側)がそれぞれ曲線を描き、それが交差したところで数量と価格が同時に決まる、というところで終わっています。それを一歩進め、労働市場を例にとって、例えば日本で6,000万人の働きたい人がいたとしても、その均衡点が5,000万人だったとしたら、1,000万人が失業してしまうことをお伝えしました。一見、需要と供給の一致でハッピーエンドと思いがちなのですが、どっこいその水準がハッピーとは限らないのです。
そんな話をして授業を終えた後、ひとりの学生さんが私のところにやってきました。「今日の需要と供給の話はおもしろかったです。先日有名なアーティストさんのお話を聞く機会があったのですが、芸術家はいくら芸術的だと思って作品を作っても、世の中の需要に応えられていなければ意味がない」という話をしていました。「需要が見込める作品を作る」という意味で、「芸術と経済学ってつながっているんですねぇ」と話してくれたのです。
私にとっては目からウロコ。芸術家にも役立つ経済学の話、これからいろいろ考えていかないとな、と思った瞬間でした。
創作のヒントは、創作外の思わぬものにあるのかもしれませんね。授業って、学生から教わることが多いのも、教える側にとっての魅力です。