音大生応援団長の進路指導
連載88

芸術と経済学②

前回お話しした経済学の初回授業がありました。東キャンパス、西キャンパスそれぞれで行ったのですが、いずれの授業も履修者が100人近くもいてビックリ! 総合芸術大学といえど、1学年500人前後の小規模な大学です。選択科目に100名も集まるとは思いもよりませんでした。20人ぐらいの履修を想定し、ゼミ形式で考えていたのですが、急遽大部屋方式の授業に切り替えました。

初回でしたので、経済学とはそもそもどんな学問か、どういう登場人物(経済主体)がいるのか、経済活動って具体的にはどういう活動なのか、などの基本的な説明をすませたあと、当日のテーマである需要と供給の話に入りました。

需要と供給

中学や高校では、縦軸を価格、横軸を数量とした座標軸上に、需要サイド(必要とする側)と供給サイド(その商品やサービスを提供する側)がそれぞれ曲線を描き、それが交差したところで数量と価格が同時に決まる、というところで終わっています。それを一歩進め、労働市場を例にとって、例えば日本で6,000万人の働きたい人がいたとしても、その均衡点が5,000万人だったとしたら、1,000万人が失業してしまうことをお伝えしました。一見、需要と供給の一致でハッピーエンドと思いがちなのですが、どっこいその水準がハッピーとは限らないのです。

芸術と経済学 そんな話をして授業を終えた後、ひとりの学生さんが私のところにやってきました。「今日の需要と供給の話はおもしろかったです。先日有名なアーティストさんのお話を聞く機会があったのですが、芸術家はいくら芸術的だと思って作品を作っても、世の中の需要に応えられていなければ意味がない」という話をしていました。「需要が見込める作品を作る」という意味で、「芸術と経済学ってつながっているんですねぇ」と話してくれたのです。

私にとっては目からウロコ。芸術家にも役立つ経済学の話、これからいろいろ考えていかないとな、と思った瞬間でした。

創作のヒントは、創作外の思わぬものにあるのかもしれませんね。授業って、学生から教わることが多いのも、教える側にとっての魅力です。 

音大生の応援団長、大内孝夫 profile

音大生の応援団長、大内孝夫 元メガバンク支店長(慶応義塾大学経済学部卒)。
音大に転職し、音大生のすばらしさに感動!『「音大卒」は武器になる』を執筆、ベストセラーに。企業就職のみならず、演奏家、音楽教室などを志すすべての音大生にエールを送る。2020年より名古屋芸術大学教授、全日本ピアノ指導者協会キャリア支援室長。他の著作として『「音大卒」の戦い方』(ヤマハミュージックメディア)、『大学就職課発!! 目からウロコの就活術』『「音楽教室の経営」塾』①、②巻(ともに音楽之友社)、『そうだ!音楽教室に行こう』(音楽之友社)など。

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次回の掲載は2024年10月10日ごろを予定しております! ぜひお楽しみに!

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