音楽教室の先生を志す方へ
名古屋芸術大学では、本年度からある大手音楽教室のグレード取得試験を学内で実施することにしました。まだ募集途中ですが、数名がチャレンジするようで、実施を決めてよかったと感じています。ただもう少し多くの学生にチャレンジしてほしい、というのが本音です。
私は仕事柄、音楽教室関係者にお話をうかがう機会が多いのですが、どこも先生が足りないと話します。どこに原因があるのでしょうか?
ひとつには処遇面があるようです。みなさん音大卒後すぐは多くの生徒さんを任せられない、と口をそろえます。受け持つ生徒が数人では収入も限られてしまいます。ヤマハやカワイのような大手音楽教室でも、一般就職と同じように社内での育成が必要だといいます。このあたりは音大のカリキュラム改善の余地があるかもしれません。演奏家や教員育成のカリキュラムは豊富な一方、音楽指導者育成のカリキュラムが不足している可能性があります。
もうひとつは「教える」ことに魅力を感じる学生が減っていることが考えられます。これは教員志望の学生が減っていることからも裏付けられそうです。教育現場はサービス残業が多いとの印象を与える報道が多くあり、教員採用試験の受験者数は減少し、全国で教員不足が露呈しています。
でも、「音楽を教えられる」ってすばらしいことだと思うんですよ。英数国理社は、AIが最も得意とする分野ですから、やがて人間が関わる部分は狭くなります。その点音楽などの芸術は、人間だからこそ与えられる感動や情動を扱っていますからAIに代替されることはまずありません。先日、90歳代でハーモニカを教えている男の先生にお目にかかりました。大変お元気で、矍鑠としておられます。音楽が元気の源になっているとお見受けしました。定年なく教え続けられるのも、音楽教室の先生の魅力ですね。
このコラムを参考に、ビジネスとして成り立つ音楽教室を多くの音大卒業生に作って頂きたいですし、それに少しでも役立つ情報を発信していきたいと改めて思いました。