大学教員を志す方へ
私の勤務する大学は、1月に定期試験などで成績評価を行い、今は来年度の教員の陣容を固める会議や入試の時期に入っています。私は昨年度まではこれらに関わることがなかったのですが、今年度から音楽領域の学部と大学院の責任者になり、これらに深く関わるようになりました。
必然、履歴書や教育研究業績書に目を通す機会が増えたのですが、これに記載されている内容の差異に驚くことがしばしばです。

履歴書をみると、学会などにいくつも所属している人もいれば、学会には入らず空欄の人もいます。前者の教育研究業績書にはさまざまな単独論文、共同論文が並び、後者の多くはスカスカです。またわかりにくい単語に解説を付している丁寧なものもあれば、その業界の人にしかわからないような単語がずらずら並んでいるものもあります。「その他」欄は多くの人が空欄ですが、中にはそこをうまく使い、指定された内容以外に自分がアピールしたいポイントを盛り込んでいる人もいます。読めば読むほど、その方の人格が溢れ出てくるような感覚になります。
またできることを一本に絞ってそのプロだとアピールするのもあれば、逆に幅広い科目に対応できそうなのもあります。大学にはさまざまな科目がありますから、複数科目をお願いできそうな書面の方が好まれるのではないでしょうか。それと「その道のプロ」は存外多く、過当競争になりがちです。
このように拝見していくと、大学教員を志す方は日ごろさまざまな活動に関わった方がよいと感じます。複数の学会に入り、人と交わることで人脈も広がるはずです。しかし現実には自分の演奏活動や関心事項の研究に没頭しがちな傾向にあるようです。
大学は、学生が教育を受ける立場から社会の荒波に飛び出す橋渡し役。演奏歴や研究成果は大事ですが、大学教員には、学生が抱く社会に出る不安や恐怖を解消させ、安心や希望に転換させる重要な役割があります。大学教員を志す方には、是非そのことを肝に銘じていただきたいと思います。
