音楽は人の人生を
変えることがある
私の人生を大きく変えたのは2013年にみずほ銀行から銀行のお取引先である武蔵野音楽大学を紹介されて出向し、その後転職したことでした。しかしそのきっかけとなったのは、私が銀行に提出していた履歴書で、趣味欄に食べ歩き、ウォーキングなどの後にピアノ、フルート、合唱と記し、それが銀行の人事部の目に留まったことでした。履歴書の趣味欄が音大主任教授の道につながっているとは想像だにしないことです。

ではその音楽と私の出会いはどうだったかーーーじつは私は小学生時代、苗字の「おおうち」をもじって「オンチ」とあだ名されるほど歌が下手で、音楽は大嫌いな科目でした。それを変えてくれたのは中学2年生のときの音楽の先生です。
私は中学2年の二学期に広島から東京の中学に転校しました。ある日の音楽の授業が終わった際、先生から「大内君、ちょっと残って」と言われました。また怒られるのかな、くらいの気持ちでいると、「大内君、私が伴奏するから歌ってみて」と言われました。言われたとおりに歌うと、不思議なことに歌えるではありませんか!
「大内君、あなたは音痴なんかじゃないわよ。逆にいい声している。ただ音程が低いだけよ。ベースっていうんだけど、合唱ではとっても大事なパートなのよ」と仰るではありませんか。あとからわかったことですが、先生は音程を下げて弾いてくれたのです。

これをきっかけに学校の音楽室に入り浸るようになりました。そして音大に通っている従妹から古いフルートを譲り受けて教わり、3年生で新設校に転校するとブラスバンド部に入りました。その新設校で同じクラスになった友人のお父さんが合唱指揮者だったため、その合唱団にも入りました。こうして音楽漬けの青春を送りましたが、社会人になってほとんどやらなくなりました。それが、30年以上経って再び音楽と出会ったのです。
あのときの音楽の先生との出会いがなかったら、今はありません。音楽は人の人生を変えることがある、音楽の先生には人の人生を変える力がある、としみじみ感じます。