教員になる④
―教員採用試験は
どうなっているの?(その3)―
今回は教員採用試験に合格するための戦略について考えてみたいと思います。前々回のコラムで小、中、高などの校種で試験の平均倍率が違うという話をしましたが、じつは自治体による差が大きいのも大きな特徴です。
文部科学省によれば、2021年度の試験で一番低いのは小学校の2.6倍ですが、その中には2倍を切って1倍台の自治体も15前後あります。これなどは狙い目ではないでしょうか。中学、高校では残念ながら(?)2倍を切る自治体はなく、中学では沖縄県の13.7倍がトップで新潟県の2.3倍がボトム、高校では沖縄県の18.4倍がトップでボトムは川崎市の2.3倍となっています。なおここでは省略しますが、中高は教科ごとにも倍率が異なりますので、きめ細かくチェックしてみましょう。
競争率の高い自治体
小学校 | 1 | 神戸市 | 7.3 |
---|---|---|---|
2 | 高知県 | 6.9 | |
3 | 奈良県 | 5.1 | |
4 | 兵庫県 | 4.7 | |
5 | 三重県 | 4.6 | |
5 | 沖縄県 | 4.6 | |
中学校 | 1 | 沖縄県 | 13.7 |
2 | 高知県 | 9.5 | |
3 | 川崎市 | 8.2 | |
4 | 三重県 | 7.1 | |
5 | 京都市 | 6.6 | |
高等学校 | 1 | 沖縄県 | 18.4 |
2 | 三重県 | 13.8 | |
3 | 秋田県 | 12.2 | |
4 | 福島県 | 12.1 | |
5 | 新潟県 | 11.4 | |
5 | 大阪市 | 11.4 |
競争率の低い自治体
小学校 | 1 | 佐賀県 | 1.4 |
---|---|---|---|
2 | 福岡県 | 1.5 | |
2 | 長崎県 | 1.5 | |
2 | 富山県 | 1.5 | |
5 | 山形県 | 1.6 | |
5 | 大分県 | 1.6 | |
中学校 | 1 | 新潟県 | 2.3 |
2 | 茨城県 | 2.6 | |
3 | 佐賀県 | 2.7 | |
4 | 山形県 | 2.8 | |
4 | 広島県 | 2.8 | |
高等学校 | 1 | 川崎市 | 2.3 |
2 | 横浜市 | 2.5 | |
3 | 茨城県 | 4.0 | |
4 | 福岡市 | 4.6 | |
5 | 長崎県 | 4.7 |
*「令和3年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」(文部科学省)より
また競争倍率だけではなく、試験日も違う場合があるので、複数の自治体の受験が可能です。ただ、ある程度集中しています。試験日の異なるグループの中でどこを受けるか、戦略を練りましょう。
ここまで私立学校について触れませんでしたが、私立学校は音楽の授業時間数削減などで、正規教員になるのが非常に難しいのが実情です。非常勤のみの学校が多くなっており、たまに正規教員の募集があると、大都市では100倍を超えるほどです。公立の現役の先生も受けますから、大学卒業後すぐに私立を目指すのは残念ながらお勧めしにくい状況です。
ただ募集があった場合には、チャレンジするのもひとつだと思います。
出身の私立学校で教えたい、地元がいい、高校生を教えたいなど、ご本人の希望はいろいろおありだと思います。それを貫くか、受かる確率を重視するか、ここは難しいところですね。私なら自分の実力を客観視し、まずは受かるところを目指すかな、と思います。何年も試験を受けるのは辛いですから(笑)。
次回は「教員になる」最終回です。残念ながら受からなかった場合の対応や、晴れて受かった際に待ち受ける教員のお仕事とやりがいについて、お話ししたいと思います。