音楽ビジネスのヒント①
音楽教室と銀行
私は全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)の音楽教室経営相談窓口(オンライン)を担当していることもあり、音楽の先生からアドバイスを求められることが多くあります。銀行員あがりに、なぜ音楽教室の経営アドバイスができるのでしょうか?
アナウンサーと銀行員の共通点については第68回のコラム(こちら>>>)に書きましたが、じつは私から見ると、銀行と音楽教室にも大きな共通点があります。それは、「街を歩けばいくつも見つかる」ということです。ちょっとした街を歩けば、銀行や音楽教室はいくつもありますよね。
しかも銀行の金利や手数料はどこもほぼ同じ。こういう中での戦いに、私は銀行に勤めてしばらくの間大変苦労しました。ある日、ふと「他行の銀行員ってどんな話をしているのだろう?」と疑問が頭をよぎりました。みんなきっとおカネの話をしているはずです。みんなと同じようにやっていては勝ち目はないと思い、思い切ってお取引先に行ったときは、自分からおカネの話をするのはやめようと決意しました。
うかがう部署も経理は最小限にとどめ、工場とか人事部に足繫く通うようになりました。そうすると工場が手狭になっていたり、システムの更新を検討していたりと、これまで知らなかった情報が手に入るようになりました。そして今の工場よりはるかに大きな工場が建てられる土地を不動産屋さんに探してもらったり、性能の高い社内システムを扱う会社を銀行内の取引先から探したりというのが仕事になりました。そうして工場や人事部のニーズにマッチできれば、それに必要な資金は私の銀行から借りて頂けます。銀行員の仕事は「おカネを貸す」ことではなく、「おカネが必要になるシーンを作ること」だと気づいた瞬間でした。
「音楽教室は音楽を教えるところ」と思っている限り、中々生徒は集まりません。これでは銀行が金利競争に巻き込まれるように、月謝引き下げ競争に巻き込まれてしまいます。音楽を教わる先に、生徒さんや親御さんは何を求めているのかを深く考えて教室作りを行う必要があります。